27年度 モデル7 移乗支援/見守り支援
社会福祉法人 シルヴァーウィング
導入機器の概要
- 機器名:リショーネ
- 対象分野:移乗支援(非装着型)
- 機器メーカー:パナソニック株式会社 エコソリューションズ社
- 機器名:マッスルスーツ
- 対象分野:移乗支援(装着型)
- 機器メーカー:株式会社イノフィス
- 機器名:OWLSIGHT
- 対象分野:見守り支援
- 機器メーカー:株式会社イデアクエスト
- 機器名:Smart-CARE
- 対象分野:見守り支援
- 機器メーカー:岩崎通信機株式会社
移乗支援、見守り支援の2分野から各々2機器を導入し実証評価
■ リショーネ(パナソニック):移乗支援(非装着型)
持ち上げない移乗を実現。電動ケアベッドと電動リクライニング車いすを融合した新たな概念のロボット介護機器。電動ケアベッドの一部が電動リクライニング車いすとして分離することで、介助する方/介助を受ける方双方に負担をかけることなく、ベッドから車いすへの移乗を安全に行うことが可能。
リショーネ
■ マッスルスーツ(イノフィス):移乗支援(装着型)
乗作業時の上げ下げ動作を空気圧で補助し、介護職員は腰に負担なく介助が可能。
空気を動力源としており、ECOでありかつ安全性も高く故障が少ないのが特徴。
装着は約10秒。
マッスルスーツ
■ OWLSIGHT(イデアクエスト):見守り支援
赤外光を利用したセンサにより被介護者の立ちあがる、柵にもたれる、といった姿勢の変化による大きな動きと、もだえ、ふるえのような小さな動きとのどちらも検出可能なベッド見守りシステム。
被介護者のプライバシーを配慮しながら、非接触・無拘束で見守り、センサから得られた情報を、人工知能を用いて処理することで、被介護者が危険な状態を判断し、介護者に通報。
OWLSIGHT
■ Smart-Care(岩崎通信機):見守り支援
高齢者の生活をサポートする“多機能コミュニケーションツール”。
緊急ボタンや見守りセンサにより、即座に異常を知らせ、マイク・スピーカーを内蔵しハンズフリー通話が可能。
高齢者向け住宅や介護施設において、構内交換機に収容することで、簡易的なナースコールシステムを構築可能。
Smart-CARE
機器導入経過の概要
移乗、見守りともに、被介護者・介護者双方に肉体的・心理的負担
機器導入前の課題
- 介護度の高い要介護者が、ベッドから車いすへの移乗の際に、体が滑り落ちるというリスクがあり、要介護者・介護者双方にとって、肉体的・心理的負担となっている。
- 介護者が中腰で行う動作(例:被介護者の体位変換、移乗支持、ベッドのシーツ交換、臥床者の清拭等)が身体的な負担となっており、腰部のけが、疲労、疼痛の原因と考えられる。
- 特に夜間は定時巡回に加えて、ベッドからの転落防止のための見守りや、物音に対する確認などのため、訪室回数が多くなりがちである。その結果、業務の効率の低下と心理的な負担を感じている。
ベッドから車いすへの移乗の様子(従来の方法)
機器導入後の経過
移乗支援時の中腰動作の負担軽減見守り業務の効率向上などを検証
- ベッドから車いすへの移乗時に被介護者の肉体的・心理的負担を軽減するために、離床アシストベッド(リショーネ)を導入し、被介護者・介護者双方に負担が少なく、安全に移乗を行うことができるかを検証することとした。
- 中腰で行う動作の負担軽減を図るため、装着型の移乗支援ロボット(マッスルスーツ スタンドアローンモデル)を導入し、介護者の疲労度、疼痛、動作時間等を検証することとした。
- 見守り業務の効率向上と心理負担低減が実現できるかを検証するため、OWLSIGHTおよびSmart-CAREを導入した。
課題分析から導入・実証・評価のスケジュール
機器活用のためのフォローアップ
メーカーによる研修、職員の試用体験委員会の立ち上げで活用のコツを共有
- メーカーの支援を受け、機器操作の研修を行った。
- 被介護者の立場に立った介護ロボットの説明ができるよう、実証開始に先立って職員自ら介護ロボットの体験をするよう努めた。
- 施設職員が「ロボット活用委員会」を立ち上げ、介護者内の周知を確実なものにすることとあわせ、活用のコツを共有するよう図った。
装着型移乗支援機器の社員研修
機器と施設・介護方法の適合
メーカー説明・デモンストレーションで不安感や抵抗感を払拭
- メーカーからの事前説明や実際に機器を使ってのデモンストレーションといった機会を通じて、被介護者の不安感や抵抗感を払拭していった。
また介護者側もメーカーからの説明・デモンストレーションを経験したことで、メーカーに対するフィードバックの場などで的確な意見が多かった。
実証評価の結果
機器によって有用性と改善効果、必要改良点などを認める
■ リショーネ(パナソニック):移乗支援(非装着型)
「肘・膝・腰」への負担が、リショーネを使うことで低減できるものと考えられる。(下図参照)
<従来の移乗>![]() |
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<リショーネを用いた移乗>![]() |
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ヒアリングによるリショーネ使用前後の変化 |
被介護者(利用者)および介護者に対するヒアリング調査で、リショーネ使用前後の負担度(身体的負担・心理的負担)、座位時間・移動回数の増減などを調査した結果、被介護者・介護者双方に改善の効果が見られた。(前ページ図 「ヒアリングによるリショーネ使用前後の変化」参照)
■ マッスルスーツ(イノフィス):移乗支援(装着型)
おむつ交換おいては、マッスルスーツ(表ではMSと表記)をつけていた方が脈拍の変位も小さいため、疲労度が低いと考えられる。
各動作における脈拍の変位比較(MSありとMSなしの比較)
また移乗においては、マッスルスーツの使用により脈拍の変動が小さくなるという効果は認められたが、継続的な着用による変化は認められなかった。
■ OWLSIGHT(イデアクエスト):見守り支援
夜間(20:00~7:00)の介護業務での見守り機器の有用性について観察・評価を行った。
寝入るまで頻繁に動く被介護者があり、その動きに反応して「要確認」通報があった。
また、「未検知」通報があったが、対象者はベッドにいた。記録を確認すると、呼吸を含む体動が周期的に停止しており、これに対する検知と思われる。
座位等兆候の段階で検知・通報があり、事前に対応できて効果があった。
さらに、生体反応を取得できるセンサーにより、いままでわかっていなかった睡眠時無呼吸の可能性があることがわかった。
改良が必要な点はまだ多いが、離れたベッド上の状況を確認できる機器として、見守り業務の負担軽減に効果が期待できる。
■ Smart-Care(岩崎通信機):見守り支援
従来品から改良を加え、離床時の手動切り替えスイッチを自動化し、バイタル異常による緊急通報の仕組みを加えることで、一層の介護者負担軽減につながった。
今後の課題と展望
積極的に“使う”ことを意識し慣れることが重要
■ 介護ロボット機器等個別の課題
- リショーネ:他の介護用品と円滑に連携するために、機器を改良すべきポイント(例えばフットレスト部)が明確になった。
- マッスルスーツ:装着時、腿パッドが被介護者にあたり、痛いとの訴えがあった。腿パッドの外側にクッションを設けるなど緩衝の必要があると考えられる。
- Smart-CARE:Smart-CAREからの発報ログや、ベッドセンサーの検知ログと組み合わせて記録を取り、蓄積していくことが、活用性の高いシステムにつながると思われる。
- Smart-CARE:介護現場の多忙な状況で、常に現況をディスプレイで確認するというオペレーションでなく、異常時に通知があった際に、通報に関する画面を詳細に確認できるというシステムが求められている。
- OWLSIGHT:介護記録システムなど、介護施設での従来から使用されているシステムとの連携により、ケアの改善・有効利用が図られると考えられる。
■ 全体の課題
- 介護ロボットの利用を被介護者一人ひとりのケアプランに反映させていくことが、介護ロボット活用促進という側面からも、活用の効果測定の側面からも重要であると思われる。
- 人員面として、介護ロボット活用促進には、まず積極的に“使う”ことを意識し、介護ロボットに慣れることが重要である。