27年度 モデル3 移乗支援(装着型)
株式会社菊池製作所
導入機器の概要
- 機器名:マッスルスーツ
- 機器メーカー:株式会社イノフィス
普段の重作業や中腰姿勢での作業を楽にする動作補助装置
持てない物を持ち上げたり、100kgの物が軽々持ち上がるというパワーアップというよりも、普段の重作業や中腰姿勢での作業を楽にする動作補助装置。例えば、重量物の持ち運びや持ち上げ下げ動作や移乗介助、中腰姿勢での仕分け作業やおむつ介助、シーツ交換等の作業をばねの代わりの人工筋肉の補助力で、従業員や介護職員の腰負担を軽減させて、楽に作業ができるようになる。
【機器の特徴】
① 補助力は最大35.7kgf、腰の負担軽減する。
② シンプルな構造であるため、故障が少ない。
③ 動力源が圧縮空気なので、ECOであり安全性が高い。
④ 装着10秒。誰でも簡単に装着が可能。
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スタンドアロン及びタンク式 | スタンドアロン及びタンク式 |
機器導入経過の概要
機器導入前の課題
腰痛を感じる場面のうち、排泄介助で機器の効果が一番発揮されると想定
現在業務上で困っていることをヒアリングした結果、26人中22人が腰に不安があることが判明した。腰痛を感じる場面は移乗(車椅子⇔ベッド)、移乗(車椅子⇔トイレ)、排泄介助、入浴(特に退浴時)である。このうち、移乗はすでにスーパートランスファーやスライディングボードを使用しているため、今回は全体としては実践しないこととした。また退浴介助も要望は多かったが、機器が水に濡れることと、利用者の体を傷つける可能性があるということで今回は除外した。
排泄介助において、中腰での作業を連続した複数人を対象に行うため、マッスルスーツの効果が一番発揮されると想定した。
機器導入後の経過
会議で機器の概要を学習。
実地導入研修で使用上の不具合報告
11月末、マッスルスーツの概要を職員全体会議で学習。
12月上旬、実地での導入研修を行った。
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16台のマッスルスーツ(2棟4ユニット用) | コンプレッサーの使い方 |
スタンドアロン、スタンドアロンソフトフィット Fサイズ Sサイズ
各2台 計8台
タンク式(呼気タイプ)、タンク式(タッチタイプ)Fサイズ Sサイズ
各2台 計8台
12月下旬、使用上の不具合が報告された
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1. 空気を入れすぎると床の物が拾えない | 2. 空気プラグが利用者の顔にあたる |
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3. ベルトアジャスタが利用者の顔にあたる | 4. 利用者がベルトをつかむ |
機器活用のためのフォローアップ
空気圧で解消、新型カバー導入で解決はかる
前項、1. は空気圧で解消。2、3に対応する新型カバーを導入。
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カバーを変えても、マッスルスーツが後頭部に当たる事象が解決せず
機器と施設・介護方法の適合
着用方法の検討により、多くの不具合が改善
着用方法の検討により、使用上の不具合の多くが改善した。
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着用の仕方を変えると頭に当たらなくなる |
実証評価の結果
動きの制限が機器の利用を躊躇させる要因に
中腰の姿勢で行う腰への負担軽減について、実証評価してもらった。
中腰での姿勢での排泄介助、体位交換において、多くの方から腰への負担は軽減されたとの評価を得た。
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中腰の姿勢での排泄介助、体位交換 | 膝をベッドに上げた場合 |
通常、腰の負担を軽くするため、右上写真のように、片膝を立てて行っている方もいた。膝を立てた場合、足パッドにより動きが制限され、ベット下方に置いたオムツを取るためには体の向きを一度変える作業が必要になる。こういう動きの制限が利用を躊躇させる要因になっている。
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排泄介助中に床に置いた陰洗ボトルを取ろうとすると、足パッドが邪魔になる | |
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足パッドを後方に外すことで、深く座ることも可能になる |
ベッドから車椅子への移乗において、抱え上げた際利用者が動いたりし、介護者自身の態勢が深くかがんだ場合、マッスルスーツがずり上がる場合があった。
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この姿勢の場合は問題ない | 深くかがんでしまうと、ずり上がってしまう |
2人対応の車椅子からトイレへの移乗の際、トイレから出る場合は効果的に使用できるが、反対にトイレに入る場合は、マッスルスーツの大きさを気にする必要があり、利用者に気が回らなくなってしまう場面があった。
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トイレ内から出る場合はほぼ問題ない | トイレに入る際は、周辺に気を使う必要があり、 利用者に集中できないことがある |
ベルト位置の検証(前に着用した方のベルト調整により、着用感が変わる)
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胸の押さえが首にきている | 上下ベルトの調整で胸の中央にくる |
体格差により、アジャスタ位置の変更が行われ、自身の最適位置が分からなくなる
今後の課題と展望
着用ポジションの明確化が課題
装着感に改善が必要
着用ポジションの明確化が今後の課題である。
同じ人が同じサイズの同じ機種を使ったとしても使用感が大きく違うという報告が複数件あった。体調等の影響もあるだろうが、ベルト位置が一定でないことが問題ではないかと仮定する。
ベルトに3cm幅の目印をつけ試用を始めた。今後パターンを検討し、体型等の違いでの最適ポジションを探していく。
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排泄介助、体位交換、シーツ交換など中腰での作業において、腰への負担の効果を多くの使用者から得ることができた。その一方で重量やサイズ、装着感にはまだまだ改善が必要という意見もいただいた。慣れない機器を背負い、不具合も感じながら3カ月間評価していただいたスタッフの皆様に感謝し、これからの開発につなげていきたい。